父に疎まれ、
なお戦い続けた
『古事記』『日本書紀』に伝わる、悲劇の英雄譚。父に愛されず、休む間もなく戦いへ送り出された若き王子の物語。
父に疎まれた王子
景行天皇の皇子・小碓命(おうすのみこと)。あまりに猛々しい気性ゆえ、父・天皇に恐れられた。兄を素手で殺めたことで、父はこの子を遠ざけた。「西の熊襲を討て」と、まだ少年の王子を一人、危地へと送り出したのだ。それは体のよい厄介払いでもあった。
草薙の剣と東征
女装して熊襲建を討ち、「ヤマトタケル」の名を贈られた。だが帰還する間もなく、今度は東国へ。叔母・倭姫命から授かった天叢雲剣 ― 草薙の剣。野火に囲まれたとき、その剣で草を薙ぎ、火を退けて生き延びた。彼は、ただ戦い続けるしかなかった。
白鳥となって
伊吹山の神に敗れ、深い傷を負ったヤマトタケル。故郷・大和を想いながら、能煩野(のぼの)でついに力尽きる。「倭は国のまほろば」― 望郷の歌を遺して。その魂は一羽の白鳥となり、大和の空へと飛び立ったという。父に愛されることのなかった王子は、最期、空の自由を得た。